2014年12月09日
パナソニックのミラーレス一眼カメラGH4。前機種のGH3から、動画、スチル両面において画質、撮影機能が大きく進化したことは、前回このコーナーで触れましたが、では「このカメラをどう使いこなすか」。そこを考察してみたいと思います。
4KからHD画像を切り出して使う
GH4、最大の目玉は、やはり4K撮影に対応したことでしょう。時代の流れも4Kへ一直線です。しかし現状の筆者の仕事では、まだまだHD/フルHDがメイン。そこでかなり「贅沢」ですが、4Kで撮影をしてHD/フルHDで画像を仕上げるという使い方が考えられます。
下の作例を見ていただけるとわかるのですが、4Kというサイズと、HDのサイズの差はこれくらいあります。画面に小さく写っている人物を「バストアップ」に切り出しても、画像劣化は全くないわけです。これだけ差があると、1台である意味「マルチカメラ」として使うことも可能です。カメラ、アングルが固定されていても、後からの編集作業でズーム、パンニング、拡大表示、アップとロングの切り替えなどをした動画が簡単に作れてしまいます。
たとえばコンサートやセミナーなど、会場後方にセンターカメラとしてGH4をセット。カメラ固定、アングル固定でずっと引きの映像を撮っておきます。自分は手持ちの別カメラでステージ脇などから狙えば、撮影者1人でもカメラ3〜4台分のアングルの撮影ができるというわけです。
HD、フルHD仕上げの動画でも、4K撮影のメリットは大きい
4Kの画像に対し、HDのサイズは画面の明るくなっている部分。つまり最終的にHDで仕上げるなら、引きの4K映像から、人物のバストアップ部分だけを切り出すことが可能だ。
実際に編集するとこんな感じ。左の遠景が元のクリップ。右がタイムライン上に配置した拡大の映像。4Kでは288%拡大使用だが、HD出力時にほぼ100%使用となる。
「ALL-Intra」撮影の可能性
GH4では、フルHD撮影までIPBとALL-Intraの動画圧縮コーデックを選択できます(4K撮影はIPB方式のみ)。
簡単に言ってしまえば、IPBは圧縮の際、キーとなるフレームを設定、画面の動いていない部分はそのまま流用し、連続するコマをまとめて圧縮する方式。圧縮率が高くデータの容量は小さくなりますが、実画像(Intra)が1秒間に2コマくらいしか存在しないので、グラデーション部分やオーバーラップ部分にトーンジャンプを起こしやすいのが欠点です。本来は配信用として設定されたコーデックですが、圧縮率の高さからカメラ記録にも用いられるようになってきました。
対してALL-Intraは撮影時に1コマずつ、30pであれば1秒間に30コマの画像を撮影/圧縮していきます。そのため容量は大きく、またビットレートが高くないと「IPB画像よりも品質が低くなる」場合もあります(圧縮率の高いJPEGと考えるといいでしょう)。ただしコマ単位なので、編集の際の自由度は高く、好きなところで切り張りができるし、強めの編集をかけても劣化が少なく、グラデーションにトーンジャンプも出にくい。撮影後の編集作業には最適な方式と言えます。
GH3でもALL-Intraでの撮影はできたのですが、ビットレートは75Mbpsで、モスキートノイズが出るなど、IPB(50Mbps)よりも画質に難点がありました。しかしGH4のALL-Intraのビットレートは200Mbpsです。ビットレート100Mbps設定のIPBに対し、画質的に遜色ありませんし、後々の編集のしやすさは、ALL-Intraに軍配が上がります。秒60コマでの撮影もサポートしているので、速いシャッタースピードを使用しても(凄いことです)、そこそこ滑らかな動きを記録できそうなのも魅力です。
当然データは大きくなってしまいますが、特に高周波成分が多い画像の場合は、IPBも結局は同じような容量になってしまいます。データの総量を気にしないですむ場合は、ALL-Intraでの撮影がお勧めなのです。
使えるフォーカス機能
前回でも触れたフォーカスアシスト。実際に撮影でも使ってみましたが、驚くほどの性能、ぜひ使いこなしたい機能です。たとえば背面ディスプレイで被写体をタッチすることでピント位置が移動できる ぼけた画像から背景にピントを合わせ、その後前面の主被写体にフォーカスする なんてことが、いとも簡単にできてしまうのです。フォーカスインも、少々スピードが早いですが、そこそこ使用できます。欲を言えばフォーカススピードが3段階くらい切り替えられて、もう少しゆっくりピントが合う設定があれば、いっそう幸せ (ちなみにこれは「超音波モーター駆動」では難しいでしょう。静止画ではピントが素早く合うことは重宝されるのですが)。
さらに画面内を前後に歩き回る人物にも、ピントを合わせ続けることが可能。絞り開放で撮影してみましたが、見事に追随しています。腕のいいフォーカスマンでもこうはいかないかも 。
こんなフォーカスワークが簡単にできてしまう
液晶モニタの画面をタッチするだけで、任意の場所にピントを合わせてくれる。作例は上から「アウトフォーカス」→「後ろの観葉植物」→「人物」にフォーカス。
フォーカスマンがいなくてもこんな映像が撮れてしまう。部屋の一番奥から歩いてきて椅子に座り、カメラに寄る。一連の動作をF1.7開放絞りで見事にフォローし続けた。これは凄い。
4Kが撮れて、ALL-Intraで大幅なカラー・グレーディングも恐れずにトライできる。「使える」オートフォーカスのおかげで様々な表現も広がる。これだけできて18万円の投資。GH4は筆者の「ミニマム動画」(低予算、少スタッフの動画制作)にまさにぴったりのカメラ。この記事では、まだ発売日前、β機でのテストですが、すでに購入予約済み。実機が来るのが楽しみです。
この1冊で「ジンバルのすべて」が奥の奥までわかる一眼&ジンバル スピードマスター
ビデオSALON編集部 編集
2,000円+税
あのクリエイターが使っているレンズと作例を大公開ムービーのためのレンズ選びGUIDE BOOK
ビデオSALON編集部 編集
2,200円+税
ドローン空撮に関する各種情報を完全網羅! ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年
2,000円+税(電子書籍版1,900円+税)
鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
- クイックモーション設定で一味違う魅力的な映像を
- フジX-S10とXF50mmF1.0 R WRでポートレイト撮影
- 新時代到来を告げるM1チップ搭載MacBookの性能はいかに?
- 高速化を極めた結果、動画撮影機能が大幅アップ|ソニーα7S III
- 気軽に使えて高性能、エントリー機といって侮れないLumix G100
- MacBook Air 2018を仕事で使えるマシンにする
- ローリングシャッター歪みを計測する
- 光の色再現を評価する新基準TM-30-18を知っていますか?
- 使ってみたら絶対欲しくなるスペシャルなレンズたち
- 動画でも静止画でも「もう手放せない」Kaniフィルター
- 一眼ムービーもRAWで撮影できる時代が到来
- どう使いこなすか!? 注目のSIGMA fp
- 噂の新世代入力デバイス、Orbital2を使ってみた
- 動画撮影を本気で考えた一眼カメラ LUMIX S1H
- 高解像度静止画も動画も、という人にはお薦め、ソニーα7R IV
- 長時間勝負のタイムラプス撮影で愛用する機材
- 通話だけではもったいない。ソニー Xperia 1の凄い性能
- 4KハンディカムSONY FDR-AX700を今更ながら使ってみた
- ワンオペ撮影の強い味方となるか!? Roland V-02HD
- パナソニックのフルサイズミラーレスLUMIX S1/S1R
- ニコン Z 6で銀河のタイムラプスに挑戦
- 形はミラーレス一眼、中身はシネマカメラ、BMPCC4K(Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K)
- フルサイズミラーレス、キヤノンEOS Rの動画性能は如何に!?
- ニコン Z 7の大口径は動画性能アップにも繋がる
- 大きく進化した動画性能、FUJIFILM X-T3
- 動画編集作業を高速に行なうための特効薬
- ジンバル初心者にも気軽に使えて高機能、DJI Ronin-S
- 動画編集用コンピュータが欲しい!
- 動画撮影でF1.2大口径単焦点という選択、オリンパスM.ZUIKO PRO
- GH5Sの「Dual Native ISO」はやはりすごい
- 動画撮影でも富士フイルムの「色」への思想を感じさせるX-H1
- スチルもムービーも高性能なα7R IIIを導入しました
- HDR映像を撮影可能にするハイブリッドログガンマとは
- ニコンD850でタイムラプスムービーを極める
- 動画機能も確実に進化させてきたニコンD850
- フォトグラファーのための簡単絵コンテソフト「StoryBoard Creator」
- ますます実用的になってきた動画AF撮影/Panasonic LUMIX GH5③
- Lumix GH5の動画撮影機能をさらに検証する/Panasonic LUMIX GH5②
- スチルフォトグラファーのためのデジタル一眼レフ動画撮影ガイド/Panasonic LUMIX GH5①
- 特別編:動画撮影ならこの機能に注目 4Kムービー時代のカメラ選びのポイント
- 第46回 伝統の色と階調再現。それだけで欲しくなる!? 富士フイルムX-T2
- 第45回 iPad Airをカメラコントローラーにする「DIGITAL DIRECTOR」
- 第44回 「ただ者ではない」カメラ、ソニーα7RII
- 第43回 フォクトレンダーF0.95 NOKTONが動画撮影でも評判な理由
- 第42回 快適な4K編集のために「G-SPEED STUDIO」導入を検討する
- 第41回 高性能タブレット「VAIO Z Canvas」を使う
- 第40回 「SHOGUN」をGH4とα7Sで使ってみた
- 第39回 4K記録ができる外部レコーダー「SHOGUN」
- 第38回 オリンパスOM-D E-M5 MarkIIの「手ぶれ補正」は、かなり使える
- 第37回 軽量な一眼カメラに最適な本格派ビデオ雲台が欲しい
- 第36回 コンデジでも4K動画が撮れる! LUMIX LX100の実力
- 第35回 ストロボもLEDも測定できる「スペクトロマスターC-700」
- 第34回 FCP Xマルチカム編集の便利さを改めて実感
- 第33回 一眼ムービーの様々な「不可能」をこれ1台で解決!「NINJA BLADE」
- 第32回 日本語化&機能強化でさらに身近になった「DaVinci Resolve 11」
- 第31回 「QBiC MS-1」と専用リグで360°パノラマ動画に挑戦
- 第30回 一眼ムービーにベストマッチのALLEXスライダー三脚システム
- 第29回 動画で様々なフィルムのトーンを簡単に再現できるソフト
- 第28回 GH4を「ミニマル動画」でいかに使いこなすか!?
- 第27回 LUMIX GH4の性能アップは期待以上だった
- 第26回 NECのPAシリーズ、マスターモニタ化計画
- 第25回 シネマカメラBMPCCのRAWデータの実力
- 第24回 「DaVinci Resolve」、ただ今勉強中
- 第23回 話題のBlackmagic Pocket Cinema Cameraを使ってみた
- 第22回 ミニマル動画のワークフロー「アフレコ編」
- 第21回 ミニマル動画のワークフロー「編集編」
- 第20回 ミニマル動画のワークフロー「撮影編」
- 第19回 ミニマル動画のワークフロー「打ち合わせ、機材選択編」
- 第18回 LUMIX GH3は、想像以上に「撮れる」カメラ
- 第17回 一眼レフの足りない部分を補完するカメラ「LUMIX FZ200」
- 第16回 フレームレートとシャッタースピードの関係
- 第15回 一眼ムービーの撮影時の画質設定は?
- 第14回 SSD搭載でMacBook Proをメインマシン化計画
- 第13回 Xicato社の屋内照明用LEDを撮影に使いたい
- 第12回 Lightroomを使ってカラコレ
- 第11回 動画のバックアップはどうしていますか?
- 第10回 ビットレートを制するものは動画出力を制する!
- 第9回 画像の書き出し設定は目的によって使い分ける
- 第8回 ニコンD4を動画撮影で使ってみた
- 第7回 アンブレラを使った動画撮影の「Light Modify」を考える
- 第6回 動画撮影に適した光源とライティングを考える
- 第5回 デジタルカメラのためのオーディオインターフェイス「DC-R302」
- 第4回 未知の世界...音声、音楽、効果音
- 第3回 ムービー撮影ならではの単焦点レンズにこだわる
- 第2回 ゼロから覚えるのなら、「Final Cut Pro X」だ!
- 第1回 難しく考えず、スチル撮影の延長からスタート