2015年06月02日
Blackmagic DesignのDaVinci Resolve Softwareは、高性能で価格もリーズナブルなため、このコーナーでも何度か触れてきましたが、実は最も紹介しづらく、また使いこなすのが大変なアプリケーションでした。理由は「英語版しか存在しない」こと。筆者自身、特に最後の「動画の書き出し」では何度も躓いていました。そのDaVinci Resolveが「11」にバージョンアップ。それに伴い、ついに日本語化されたのです!
メニューをプルダウンすると、ほとんどの項目が「何をしようとしているのかよくわかる」ようになってくれました。メニューには「シリアルノード」「パラレルノード」「レイヤーノード」などの専門的な単語や、少々「怪しい日本語」も散見されるものの この日本語化は心から歓迎です。
ついに日本語化! DaVinci Resolve 11
DaVinci Resolve 11(LITE版)。
もともと多機能なソフトなので、動画編集に慣れていない人にはハードルが高かったが、日本語化で一気に使いやすくなった。筆者としては、今回のバージョンアップの最大の目玉。
「11」は機能面でも強化がされています。大きな変更点としては「カラーマッチ」機能の搭載。筆者としては「ホワイトバランスツール」を搭載して欲しかったのですが、いきなり「カラーコレクション/キャリブレーションツール」を搭載してきました。いわゆる「カラーチャートを活用して、そのシーンごとのプロファイルを作成する」機能です。基本的に「特別な色彩」や「好みの色彩」を作るものではなく、ましてや「素晴らしく、きれいな色彩」を作るものでもありません。「入力されたすべての素材の色彩を均一にするための仕組み」で、元素材の特性やカメラの色彩設計をすべてキャンセルして、「後工程で編集、調整しやすいデータとしてバランスを取る」ためのものです。
「撮影時に必ずチャートを入れる手間」は発生するものの、異なるカメラ、異なる天気、異なる光源、異なるロケ場所のデータをまとめてカラーコレクションすることが可能となりました。
この「カラーマッチ」パレットは「色相の位置と彩度合わせ」が第一義で、輝度はバランスを整える程度。オーバー/アンダーを修正するものではないようです。これはDaVinci Resolveの性格から見て、RAWデータから生成する動画がメインターゲットのためでしょう。元々ねむいRAWデータを、彩度低め、コントラストを抑えた使いやすい発色に整え、さらに目的に応じてコントラストを追加し、彩度を上げる方向のみで処理していくことが可能だからです。
一方、RAW動画撮影モードのない通常のデジタルカメラのmov.データの場合、「カラーマッチ」は注意が必要です。「風景」「スタンダード」などのカメラプロファイルで高い彩度にチューニングされた絵を撮影してしまうと、「カラーマッチ」パレットでは、その彩度をわざわざ落とすという逆ベクトルの補正がかけられます。その後、彩度やコントラストを上げることになり、画像破壊を誘発しやすい状態になってしまうのです。
また適正露光で撮影されていない場合や、ホワイトバランスを大きく崩している場合も、コントロールできる範囲が極端に狭まります。通常の一眼レフデジタルカメラによる撮影では、可能な限り彩度、コントラストを落とし気味に設定し、カメラ設定も地味目の設定で「使いやすい素材」を撮影しておくことが「コツ」です。
「Camera Raw」と「カラーマッチ」を使った色味調整のワークフロー
Blackmagic Design Pocket Cinema Cameraで撮影したRAWデータを「Camera Raw」パレットで開く。カラースペースは「BMD Film」を選択。「カラーマッチ」に持っていくため、ここでは細かい色の調整はしないでおく。
「カラーマッチ」パレットで「X-Rite ColorChecker」「Datacolor SpyderCheckr」「DSC Labs SMPTE OneShot」のいずれかのチャートを選び、映し込んだチャート部分を専用ツールで選択すると、自動的に色を合わせてくれる。
仕上げにカラーホイールでコントラスト、彩度をチューニング。新機能「グループ調整」を使うと「バッチ処理」的な操作もでき、複数のクリップをまとめて調整が可能だ。
DaVinci Resolve 11では「Camera Raw」パレットも機能強化され、Blackmagic Design Pocket Cinema Cameraなどで撮影したRAWデータの取り扱いがかなりやりやすくなりました。Adobe Lightroom等のRAWデータ現像ソフトを使用している感覚で、動画データを調整できます。「Camera Raw」パレットにハイライトとシャドウを調整するパラメーターが追加され、階調補正を行なえるようになったのです。
さらに「ミッドトーンディテール」が追加されました。いわゆるLightroomなどでいう「明瞭度」にあたります。これで「動画の質感」をコントロールできるようになります。女性の顔だけ柔らかくしてトラッキングさせることも可能。RAWデータを好みの色彩を仕上げたい場合、この「Camera Raw」パレットで、ほとんどの作業を完了させることができるのです。また「ミッドトーンディテール」は「カラーマッチ」のパレットにも搭載されているため、RAWデータでなくても適用することができます。
今回の記事では編集機能まで詳しく触れることができませんでしたが、必要とされる動画編集機能のほとんどが搭載、強化されたようです。トランジションでは、特にシネマチックな「加算ディゾルブ」が気に入りました。明るい側が先に出はじめるので、暗い画像に輝度比の高い画像を重ねて見せる時に効果的です。タイトル機能も強化され(もちろん日本語の入力も可能)、ジェネレーターもサードパーティ製の効果を読み込んで使用できます。
今回はβバージョンを使用した検証でしたが、DaVinci Resolveを使用して色調整をした後、大まかに必要な編集をここで終わらせてしまうことで、後の工程がかなり楽になりそう もう少し使い込めば、場合によっては仕上げまでこのソフト1本で作業をすべて完了させることができそうな気がしてきました。Final Cut Pro Xの相変わらずPro Res422に縛られている現状を考えると、ややこしい編集が必要のないショートムービーの場合は、徹底的に色彩を調整ができるDaVinci Resolveをメイン据えるのも一つの手だと思うのです。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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