2017年04月28日
ミラーレス一眼X-T2。このコーナーで富士フイルムのカメラを取り上げるのは初めてです。以前からフジXシリーズの肌色再現力には注目していたのですが、動画にはまだ本気で取り組んでいないように思っていたからです。しかしX-T2では4K記録ができるようになったことに加え、「動画もきれい!」ということなので、テストをしてみることにしました。
FUJIFILM X-T2
外観はマニュアル感満載。ダイアル、スイッチのコントローラーは直感的で非常にわかりやすく使いやすい。動画撮影中に絞り、シャッター速度、露出補正もコントロールできるのは嬉しい。ついでに動画としては、これらが無段階調整できると有効な機能になると感じた。 4K撮影は最速29.97p、最大10分まで、フルHDでは59.94p、最大15分までの撮影となるが、パワーブースターグリップ装着時は4K、フルHD動画共に約30分まで連続撮影可能。またフィルムシミュレーションモードの他に、4K撮影では、センサーの持つ広いダイナミックレンジを記録するLogガンマ「F-Log(エフログ)」の選択が可能。結果、その動画画質は一級品です。フジのカメラプロファイルは「フィルムシミュレーションモード」と呼ばれ、まさしくこれまでフジが販売してきたフィルムを再現した色作りになっています。銀塩時代を知る人は、モードの名前を聞いただけで仕上がりを想像できるでしょう。これら全てのモード(全16種)が動画で使用できるのです。
スチル用高画素センサーで動画を取り込む場合、大画素で取り込み動画サイズにリサイズ演算をするオーバーサンプリング方式と、ドットバイドット方式があり、それぞれに長所と短所があります。フジのセンサー「X-Trans CMOS」に限って言えば、オーバーサンプリングの効果がむちゃくちゃ良い方向に向かっていると考えられます。
4ピクセルのパターンを持つ通常のベイヤー配列とは異なり、「X-Trans CMOS」のランダムに配置されたカラーフィルターは、36ピクセル四方ごとにパターンを繰り返します。そのため「圧縮/リサイズ」でもエッジが立ちすぎず、充分な解像感となめらかな階調性、ノイズレスな再現力を発揮するのだと感じました。
フィルムシミュレーションモードを、いくつか撮り比べてみた
作例ではレフ板を立てられない(補助光もない)光があまり回らないシーンを想定。レンブラントライト気味にメイン光をあてて、顔の向きにより露光量が変化する状況で撮影してみました。この状況でまともな映像が撮れていたならば、どんな条件でも使いこなせるでしょう。
フィルムシミュレーションのモードで特に優秀だと感じたのは、プロ用ネガフィルムを再現した「PRO Neg.Std」。色味は「日本人好み」の方向を持っているものの、余計な強調がされていません。肌色のシャドウ部にグリーンかぶりやブルーミングを起こさず、見事なグラデーションを作り上げています。
ある意味、人物がターゲットならオールマイティなカーブだと言えます。撮影時のライティングがフラットな場合には、後工程でターゲットになる色彩の強調やコントラスト調整が必要かもしれませんが、快晴の屋外や高地での撮影などでは、そのままでちょうど良さそうです。
映画がネガフィルムで撮影されていた時代に培ってきた肌色の発色処理の技術が、ここにきて「ものを言っている」のでしょう。このカーブを動画撮影で使用できるのは、何にもましてアドバンテージです。
絞りF2.8 シャッタースピード1/25 ISO800 4K撮影。 モデル:米田和子
今回スペースの都合でチャート実写は掲載できませんでしたが、動画撮影時の高感度性能はISO1600までは低感度撮影とほぼ同様に扱えて、ISO3200でも大きな問題はないと感じました。ISO6400ではシャドウ側に荒れが出てくるので撮影シーンによって判断することなります。ただ、ISO10000でも確かにノイズは増えるのですが、映像の質感がさほど変わらないのには驚きました。単にノイズを消すのではなく、気にならなくなるように上手くコントロールしているのだろうと推測します。
ムービーカメラとしては、最近、各メーカーが取り入れている「5軸手ブレ補正」や「オートフォーカスの動画用最適化」が搭載されていないし、録画可能時間が短いなど、まだまだ不満な部分があります。動画撮影の様々な条件すべてを万能にこなすカメラでない。しかし得られた画像の美しさには脱帽します。ここまで「撮影した動画をそのまま使って問題なし」と感じたカメラは他にありません。人物を中心に撮影するならば、日本人の75パーセント以上が必ず「良いね」と言ってくれそうな仕上がりを保証してくれます。
※この記事はコマーシャル・フォト2017年4月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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