2014年06月02日
前々回、前回で筆者の動画制作を、セラピスメソッドのDVD用ムービーを例に紹介してきましたが、今回は編集編です。これまでのおさらいをしておくと
- 40分ほどのムービー。最終仕上げがDVDのため、スローモーション以外、720p、30fpsで撮影。
- 複数のカメラを使って撮ったアングルを切り替えながら、エクササイズの動きを見せる。
- エクササイズのシーンに解説のナレーションを入れる。
冒頭のインストラクターさんの挨拶(この方が今回のクライアントでもあります)は、現場での同時録音を予定していたのですが、野外撮影のため予想外にカラスと蝉の声が大きく、これも後から録音し直した音声をかぶせることにしました。
撮影した動画は全部で約3時間30分。今回はこれといった台本もなく、ただ必要なシーンを並べる順番を書いたメニューがあるだけ。撮影したカットの内、どれを使用するか、撮影中、どこでトラブルが起こり、それを回避したカットはどこにあるか などは、撮影した私の頭の中にあります。
私にとって全長40分ほどのムービーは大作ですが、編集するのも自分ですから、シーンの冒頭に入れたiPadのメモと撮影中に録音した音声による指示、メニューに書き込まれた撮影順があれば、どうにでもなります。
今回の編集作業は、仮編集と本編集の2段階に分けて行なっています。クライアントには仮編集段階でチェックをしてもらい、その際、映像に合わせたナレーション原稿の用意をお願いします。原稿が完成した時点で音入れを行ない、その後フィニッシュするという流れです。
撮影した動画素材をFinal Cut Pro Xに取りこむ。複数のカメラで同時撮影したアングル違いの素材は、マルチカム機能でクリップごとにまとめてくれる。そのクリップを仕上がりのストーリーに沿って再構成(写真上)。それぞれのシーンの並べ換えには、シーン冒頭に映し込んでおいたiPadのメモが活躍(写真右)。
仮編集では、まず撮影素材をすべてFinal Cut Pro X(以下FCP X)に取り込みます。
複数のカメラで同時に撮った素材でも、それぞれのカメラの日時設定が合っていれば、FCP Xのマルチカム機能で自動的にクリップをまとめてくれます。しかも音声による正確な同期も可能です。そのために、今回の撮影ではすべてのカメラのマイクをオンにして、シーンの最初などに合図の音声(スタートのかけ声)を入れてあります。
ただし、これはあくまでも「撮影した時間軸」で並べただけのもの。撮影順のメモ書きを参照にして、それぞれのクリップを構成順にタイムライン上に並べ直し、アングルを含めた使用シーンを大まかに決めたら、仮編集は完了です。
この段階で一度、クライアントチェック。全体の流れや使用アングル、仕上げの方向を確認してもらいました。
野外撮影のため「通行人が映り込んだシーン」「お日様が急に出て明るくなりすぎたシーン」についても、どこまで許容するか、修正が必要なのか、判断をします。この判断がないと、すべてのクリップに手を入れることになってしまいます。動画の編集は力業が多いので、無駄な作業はなるべく避けたいのです。
クライアントにナレーション原稿を作ってもらっている間、こちらは本編集を進めましょう。
本編集では、シーンの余分な部分などを整理していきます。ただし、この段階では不要なクリップは削除せずに、「非表示」の状態でメインタイムラインの下部に配置しておきます。いつ必要になるかもしれません。FCP Xの良いところは一度不要なシーンを切り詰めて配置したクリップであっても、後から尺を自在に変更可能なこと。これは素人編集者にはとてもありがたい機能です。
アングルの切り替えには「ディゾルブ」などのトランジション効果を加えます。
インストラクターにゆっくりと踊ってもらい、パナソニックLUMIX GH-3で連写したスチルカット。シャッター間隔は約1/5秒の高速連写。それをFinal Cutに取りこみ、1カット約1秒表示の設定でタイムライン上に並べる。各カットの間にディゾルブ(オーバーラップ)効果を入れると、スローモーションムービーのような雰囲気が出る。
ムービー収録後、押さえで撮っておいたスチル写真が役にたった。
またLUMIX GH-3で高速連写しておいたスチルを使いインサート映像も作ってみました。1秒1カットのタイムラプスですが、それぞれのカットをディゾルブでつなぐことによって、ちょっと印象的な映像となりました。
実を言うと挨拶シーンはインストラクターさんを正面から撮影していて、時間も3分と結構長め。そこに後からアフレコをした声を重ねると、どうしても違和感が出てしまいます(要するに口パクです)。短い時間ならさほど気にならないため、シーンの始まりだけ実際の挨拶シーンを使って、その部分だけは音声と口の動きをシンクロ。後はこのスチルで作った映像に切り替える。ちょっと苦肉の策ですがクライアントさんも気に入っていただけたようです。やはり無駄かもしれないと思っても、スチル素材は撮っておくべきですね。
さて次回はナレーションのレコーディングとレタッチ〜最終仕上げをレポートしたいと思います。DVDはとっくに完成して納品しているのですが、もうしばらくおつき合い下さい。
編集の流れ
1 | 撮影データをFCP Xに取りこみ、シーンごとにまとめる
複数のカメラで撮ったアングル違いの映像などを、音声同期機能でクリップにまとめる。
2 | 仮編集
各クリップをストーリーに沿って並べ換え、大まかに編集。
3 | クライアント(インストラクター)のチェック
どのシーンを使用するか、どのアングルを使用するか確認。
4 | 本編集
シーンの余分な部分をカット。シーン切り替え部分にディゾルブなどの効果を加える。
5 | スチル写真で作ったインサート映像を重ねる
6 | レタッチ(不要物の消去・色味などの修正)
撮影中、遠景に不意に映り込んでしまった通行人などを隠す。
7 | タイトル入れ
各チャプターにタイトルを入れる。
8 | アフレコ
現場では撮れなかった冒頭の挨拶、解説などをアフレコ。
9 | アフレコ音声を入れ、微調整してフィニッシュ
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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