2016年11月02日
ソニーα7R IIというデジタルカメラ 4240万画素という高解像度とコンパクトなボディ、そして100Mbpsの4K動画を本体記録可能。さらにフルサイズセンサーでは初の裏面照射型のCMOSを搭載することで、読み出しを高速化、高感度を実現しています。気にならないはずがありません。
4K動画も本体記録可能
外観は非常にコンパクトで、とても35ミリフルサイズ4240万画素センサー搭載、4K動画が本体記録ができるカメラとは思えない。4K動画撮影ではフルサイズのセンサーエリアを最大限に使った撮影と、センサー中央APS-Cサイズ相当部分を使って全画素読み出しを行なうSuper 35mm撮影が可能。価格は388,880円+税(ソニーストア価格)。
裏面照射型CMOSというと、よく高感度性能に注目が集まりますが、実は「センサー背面の回路設計の自由度を上げることで、4240万画素を瞬時に取り込み、処理をするスピードを得る」のが最大の目的だったそうです。その結果、センサーの伝送速度がこれまでの3.5倍を達成。4240万画素という高画素で、しかもピクセル単位のすぐれた解像力を実現しています(通常、高画素機は処理速度の問題もあり、極細部の解像力にはあまりポイントがおかれない傾向にあるのです)。またセンサーの伝送速度アップにより、動画撮影でローリングシャッター現象に対する耐性が高まったこともメリットです。
もちろん高感度性能も充分に確保されており、動画撮影時もISO感度3200位まで普通に使えるし、ISO感度6400/12800は黒い被写体(単一のグレー面など)でなければノイズも目立たないと感じました。静止画ではISO感度12800を超えても充分いけるでしょう。
動画撮影時の感度が高く感じられる理由には、画素加算のない全画素読み出し(Super 35mm撮影時)であったり、フルサイズ領域を使った場合も約3800万画素を縮小して動画を構成しているということもあります。そのため鮮鋭感は他の動画とは一線を画する品質を持っています。ビデオ基準の動画と比較すると「なるほど、なめらかな絵が動いている」と感じます。
α7R IIはどこまで極細部を解像するか
「解像力チャート」を撮影してみた(チャート部分拡大)。赤枠部分の4×4のコマには細い線で模様が描かれているが、その線の太さがちょうど1ピクセルに相当するように、カメラとチャートの距離を調整して撮影。隣の4×4コマは線が少し太く、赤枠部分の線を1ピクセル相当で撮影した場合、約1.3ピクセルに相当する。さすがに1ピクセルの線は解像しないが、α7R IIはなんと1.3ピクセルの線を解像して、上段の縦線、横線、下段の同心円などが、形として判別できる。
もう一つ、α7R IIで気になっていた機能が5軸手ブレ補正。手ブレ補正は解像度が高いほど精度が要求されますが、補正量は前のα7IIと同じ4.5段。しかし同じ4.5段を達成するために、これまでの数倍のパラメーターを投入して4240万画素をコントロールしているらしい。
実際に劇場の中を移動しながら撮影してみると、移動中の足の動き(上下動)はあまり吸収されませんでしたが、立ち止まってカメラを静止した状態での撮影は、手持ちでも画面がとても安定しています。α7R IIの5軸手ブレ補正は、動画撮影のスタビライザー効果よりも、スチル撮影で4240万画素をブレなく撮影することを大前提にしているのでしょう。
またレンズ内手ブレ補正機能があるレンズの場合は、カメラ、レンズ両方の手ブレ補正システムを組み合わせて使用するようです。後述のSELP28135Gを使用した舞台の手持ち撮影は、驚くほどの見事さでブレが抑えられました。
さて注目の4K 100Mbps記録(XAVC Sフォーマット)ですが、記録のためにはUHSスピードクラス3が必要、メモリーカードもそれなりに揃える必要があります。もっとも4Kでも、60MbpsであればUHSスピードクラス1のカードで記録可能です。
フルHD/60p、HD/120pの場合にも、50Mbpsという高いビットレートで記録できるのが魅力です。正直に言って仕事的には、4KよりもフルHD/60p、HD/120pに大きく惹かれます。4K撮影を実現した時に基本性能が大きく上がり、このカメラは「ただ者ではなくなった」ということなのでしょう。
今回はα7R IIと供に28-135mmのレンズSELP28135Gを使っています。このレンズ、何といっても電動ズームの出来が秀逸。低速で始まり一定速度でズーミング。止まる時も緩やかに静止。ズーム音はほとんど聞こえません。確かにスチル撮影では、レンズの大きさが邪魔になりますが、動画の時はピントと絞りのストロークの大きさが「見事に幸せ」。α7R IIの動画撮影では、是非一緒に使いたいレンズです。
動画撮影にはこのズームSELP28135G
今回、テスト撮影にご同行願った28-135mmズームレンズSELP28135G。小さなα7R IIとの組み合わせはバランスが悪く見えるが、手ブレ補正で手持ち撮影も問題ない。絞りのクリック解除もできて、無段階に調整が可能。
Super 35mmモード動画撮影時には焦点距離が56-270mmのズームレンズになるので、他に超広角系のズームレンズをもう一本持てば、事足りてしまう。
α7R IIとSELP28135Gで撮影。非常にクリア、かつ作られすぎていない精細感がある。このサイズでは確認できないかもしれないが、スカートのチェックの模様の鮮明さが見事。
100mmF5.6 相当で手持ち撮影したカット。比較的動きの少ないカットを選択したが、見事にカメラブレを抑えている。
取材協力 浅草六区ゆめまち劇場 http://yumemachi.jp/
劇団ゆめまち劇場ハイスクールキャンバス 「Summer Song」
※この記事はコマーシャル・フォト2015年10月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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