2016年08月04日
動画編集を快適に行なうための肝は、メインのCPUよりもGPU(画像処理の実作業を担当するプロセッサー)の性能、そして記録媒体への転送レートだと言えます。動画サイズが大きくなると、データの読み書き量が半端ではないのです。筆者のメインマシンはMacBook Pro レティナディスプレイ15inch(以下MBPと略)です。eSATA Express接続の内蔵SSDも1TBを搭載し、4Kの動画であっても短い尺であれば何とか処理をすることが可能です。
しかしノートブックの限界で「本体内に保存できるデータ量」が何といっても貧弱。超高精細画像と動画を同時に編集しようとすると、あっという間にキャッシュで空き容量がなくなってしまいます。そのため普段、作業をする時には、1TBのSSDをUSB3.0で接続して作業領域を拡張していました。
高速HDDのRAIDストレージ G-SPEED STUDIOシリーズ
右が4ベイの「G SPEED STUDIO」。左が最上位機種8ベイの「G SPEED STUDIO XL」。動画専門のプロダクションではないけれども、筆者のように動画まで手がけているフォトグラファーには、「G -SPEED STUDIO」の12TBか16TB搭載でも充分だろう。
RAID0、1、5、10対応。RAID 5にした場合、ディスク4台にデータを分散して書き込むため、実際の使用可能容量は3/4。24TBタイプの場合は18TBとなるが、仮にHDDの1台がクラッシュしてもデータの復旧が可能だ。
最上位機種の「G-SPEED STUDIO XL」は最大64TB。価格は高価だがそのスピードは驚異的。RAID10(4台ストライプのミラーリングで、速度は800Mbpsを維持して非常に高いレベルのデータ保護を掛けることが可能。おまけに復旧が速い)でも、使用可能容量は32TB。
機材詳細:http://www.g-technology.com/jp
それでも作業が一杯になり仕事が滞り始めたので、ついにHGSTジャパンにお願いしてThunderbolt 2接続のRAIDストレージ「G-SPEED STUDIO」(以下GSSと略)を借りてみました。4ベイタイプ、搭載されるHDDは1台で200Mbps近いトップスピードを持つエンタープライズクラスの超高速HDD。今回、テストしたのは6TBのHDD×4台搭載、計24TBタイプです。
デフォルトでRAID5が組まれていて、RAID5状態の速度を測定すると書込みで560Mbpsをたたき出します。これまで使っていた外付け1TBのSSDをUSB3.0接続した場合、筆者の環境では410Mbpsのスピードでしたので、それよりも高速。容量は桁違いです。もちろん持ち歩くことは難しい大きさですが、社内で移動する分には問題ありません(実はここがとても大事だったのです)。
「書込み560Mbps」がどういうスピードかというと、MBPからGSSへ、約340GBのデータ転送におよそ16分30秒。これをスタジオのネットワーク(約100Mbps)で転送すると73分かかり、FireWire800、70Mbpsの標準的なHDDに記録すると、何と140分もかかっていました。
これまでは内蔵SSDのデータを外部ストレージに移すのに、その都度かなりの時間を費やしていたので、それが解消されるだけでも大変ありがたいことです。
実際に 動画データをGSS24TBに転送し、Final Cut Pro Xを起動してみました。実作業で使用してみると、内蔵SSDに比較して立ち上がりがやや遅い感じはします。これはRAIDされたディスク全てに共通の挙動だと言っていいでしょう。データを転送の際、「各ディスクにデータを振り分ける」作業を行なってから転送が始まるためだと思われます。もっとも通常の仕事では、意識しなければ気がつかない程度。実際に作業してみての体感は、内蔵SSDとほぼ同等のスピードだと感じました。
何よりその広大な容量がありがたい。大量の4Kデータを読み込んでも、まだまだ全体の数十分の一しか使用されていないのです。MOV.データをどんどんProRes422に変換してもびくともしません。おまけにRAID 5レベルでディスクトラブルに対応しているのです。一時データの保管場所としては素晴らしい環境です。
今回、テストしたGSSの24TBタイプは実売価格で50万円程。12TBタイプが25万円程、16TBが37万円程。筆者のように動画を扱うフォトグラファーには12TBか16TBでちょうどよいかもしれません。容量と作業効率UP、データの安全性を考えれば高い買いものではない?
ちなみも今回は最上位機種である「G-SPEED STUDIO XL」も短期間ですが、借りることができました。8ベイ、8TBのHDD×8台搭載で最大64TBの容量。価格は90万円位しますが、RAID0 設定では、実測値で1125Gbpsという驚異的な転送レートを実現しています。私は今まで、これほどの高速転送を体感したことがありません。何と340GBのデータ転送に要した時間は7分でした。
G-SPEED STUDIOの速度を測ってみた
MacBook Pro 、PCIe接続内蔵SSDのスピード。この速度を基準に検証してみた。左のメーターが書き込み速度、右のメーターが読み込み速度。メーター内の数字に注目。
「G-SPEED STUDIO」RAID5設定時。内蔵のSSDには劣るものの充分なスピード。広大な作業領域、そしてRAID 5なら1台のHDDが故障しても復旧することが可能なので、そのまま安全な倉庫としても使える。
「G-SPEED STUDIO」 RAID0設定。RAID0ではHDD容量をフルに使えて、スピードも内蔵SSDとほぼ互角。ただしHDDが1台でも故障するとデータの復旧は難しい。バックアップの構築が完璧であれば、作業領域としてこの設定で使用するのもあり。
上位機種「G SPEED STUDIO XL」(64TB)。RAID0設定では、1Gbpsを突破。データ転送に関しては、内蔵のPCIe接続SSDよりも遙かに速い。
※この記事はコマーシャル・フォト2015年8月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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