2014年05月14日
前回予告したミニマル動画による「ピラティス・メソッド」紹介のDVD用動画、実際に撮影をしたので、その様子をレポートしましょう。
エクササイズを紹介する1時間ほどのムービー。ズームイン、スローモーションも必要のため、当初、予定していたカメラは、パナソニックLUMIX GH-3、同LUMIX FZ-200、ニコンD7100の3台でした。しかし直前に「真上からの撮影」というリクエストがありました。横や正面からのアングルだけではわかりにくい動きを、真上からのアングルで見せたいというリクエストです。
本来なら小型クレーンなどを用意することになるのですが 予算的に厳しいため、コンパクトなデジタル一眼ソニーα NEX-5Nと、先月紹介したフルードの一脚で対応することにしました。メインカメラは突然の雨に備え、防滴機構を持ちしかもビットレートも高いLUMIX GH-3、サブとスチル撮影用にD7100、スローモーション用にLUMIX FZ-200、俯瞰撮影用NEX-5Nという布陣です。
ロケハンは当日の朝。何しろ都内の公園はそのほとんどが9時スタート。7時頃から撮影したくてもできないのです。ロケ地の公園は何度か別件で撮影したことがあるので、あらかじめ見当を付け、当日8時頃に集合してロケハンを行ない、9時に撮影を開始。撮影当日の朝は、7月にしては気温が低く、小雨がぱらついていたため延期も考えましたが、運良く9時頃からは薄曇りのちょうど良い天候になりました。時々日が差すのが邪魔なくらいです。当日のお天気だけはどうしようもありませんね。
エクササイズ演者が15時には別のスタジオに入る予定があるため、13時までに1本2分〜4分程度のクリップを合計14本撮影。スムースに撮影できるように、まずは真上からの撮影、スローモーションが必要な撮影、立ってエクササイズする動き、座り、あるいは寝て行なうエクササイズをそれぞれまとめて撮影。セット変更ができるだけ少ない順番でプログラムを組みました。
今回の撮影でポイントとなった点をいくつか挙げてみます。まずは急遽リクエストがあり、NEX-5Nで撮影することになった俯瞰撮影。これはNEX-5Nをフルードの一脚に付け、脚の尖端を広げて胸に固定。人間クレーンスタイルでの撮影を試してみました。安定のためストラップを繋いで首にかけています。撮影する姿はどうにもかっこいい物ではありませんが、効果は絶大。「軽い」ということは、このような時に大きな意味を持つのです。おかげでこんなアクロバティックな撮影を実現できました。
カメラ本体の背面液晶を見ることができないため、HDMIケーブルを延ばしてソニー製外付けモニタCLM-V55を接続。ライトスタンドにつけて手元で映像を確認しています。レンズは重量を考えて16mm(35m換算で24mm)。ちょっと広角ですが、クライアントさんには「こんなに撮れるんだ!」と好評でした。
このCLV-V55はその後も大活躍。俯瞰撮影後の正面撮影では、演者に向けてセットして、メイン撮影用のGH-3に接続。GH-3はHDMI出力と同時にカメラの背面液晶も表示できるので、撮影者と演者が同じ映像を見ながら撮影を進められます。これもかなり好評でした。CLM-V55の位置がほぼカメラ目線のため、「視線ターゲット」の役割をしてくれます。
今回の動画でメインに使う正面アングルの撮影。左のLUMIX GH-3で撮影をしている。カメラの背面液晶画面(フリーアングル)は撮影者側に向け、外付けモニタのソニーCLM-V55は、演者に向けてカメラのホットシューに付けている。右のカメラは、サブ&スチル撮影用のニコンD7100。
計画段階では「現場で判断」となっていた音声。BGMと解説はアフレコで行くことになったのですが、冒頭の演者挨拶は現場で録音するつもりでした。ピンマイクかガンマイクか迷ったのですが、挨拶は自然な感じでマイクは映らない方がいいだろうと判断。ガンマイクを選択したのですが 予想より蝉やカラスの鳴き声が大きく、結局、アフレコで対応することになってしまいました。
今回の仕上がりはDVDのマスター版を作成するので、スローモーション以外、すべてのカメラで解像度は720p、フレームレートは30fpsを選択しています。FZ-200でのスローモーションは120fpsで撮影しました。木陰で暗い場所でしたが、FZ-200はF2.8のレンズの明るさを活かして、期待通り見事なスローモーションを撮影してくれました。
複数のカメラを使用する時の問題点として、それぞれのカメラの色彩設計が違うこと(GH-3とD7100は結構、似た発色をしていました)ですが、ホワイトバランスをすべて現場でプリセットすることで何とか色調を合わせることができました。
また今回は部分的にマルチアングル撮影も行なっています。正面からだけではわかりにくいシーンを、別アングルで見せるためです。かつては編集の際、複数映像の同期が面倒な作業だったのですが、Final Cut Pro Xでは音声を同期させることで、映像も同じ時間軸上に同期させることができます。しかも新しいAdobe Premiere Pro CCも同様の機能を搭載してきたようです。どんどん便利になりますね。
先に触れたように今回は後で音楽、ナレーションを入れるため、撮影中の音声同録は、映像の同期用とメモ代わりです。すべてのカメラの音声を録音状態にしておき、「このカットOK」とか「このカット予備」という音声を入れています。
撮影は予定通り12時30分にはすべて完了。最後にDVDのジャケットに使用するスチル撮影も行ないました。元々がスチルカメラマンですので、ポートレイトセットの組み上げ、撤収はお手の物です。画素数の大きな静止画は、動画に組み込んでパンをしてムービー風に見せることもできるし、画面の繋がりが悪い場合や、動画で不要物が映り込んでいた時の救済にも役立ちます。時間に余裕があれば、クライアントからの依頼がなくても静止画の撮影しておくことをお奨めします。
最後に、今回の撮影ではコンシューマー向けも含め4台のカメラを使いましたが、それぞれ特徴のあるカメラです。カメラの特徴を活かして撮影のバリエーションを広げる、これもミニマル動画撮影のポイントのひとつかもしれません。
この1冊で「ジンバルのすべて」が奥の奥までわかる一眼&ジンバル スピードマスター
ビデオSALON編集部 編集
2,000円+税
あのクリエイターが使っているレンズと作例を大公開ムービーのためのレンズ選びGUIDE BOOK
ビデオSALON編集部 編集
2,200円+税
ドローン空撮に関する各種情報を完全網羅! ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年
2,000円+税(電子書籍版1,900円+税)
鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
- クイックモーション設定で一味違う魅力的な映像を
- フジX-S10とXF50mmF1.0 R WRでポートレイト撮影
- 新時代到来を告げるM1チップ搭載MacBookの性能はいかに?
- 高速化を極めた結果、動画撮影機能が大幅アップ|ソニーα7S III
- 気軽に使えて高性能、エントリー機といって侮れないLumix G100
- MacBook Air 2018を仕事で使えるマシンにする
- ローリングシャッター歪みを計測する
- 光の色再現を評価する新基準TM-30-18を知っていますか?
- 使ってみたら絶対欲しくなるスペシャルなレンズたち
- 動画でも静止画でも「もう手放せない」Kaniフィルター
- 一眼ムービーもRAWで撮影できる時代が到来
- どう使いこなすか!? 注目のSIGMA fp
- 噂の新世代入力デバイス、Orbital2を使ってみた
- 動画撮影を本気で考えた一眼カメラ LUMIX S1H
- 高解像度静止画も動画も、という人にはお薦め、ソニーα7R IV
- 長時間勝負のタイムラプス撮影で愛用する機材
- 通話だけではもったいない。ソニー Xperia 1の凄い性能
- 4KハンディカムSONY FDR-AX700を今更ながら使ってみた
- ワンオペ撮影の強い味方となるか!? Roland V-02HD
- パナソニックのフルサイズミラーレスLUMIX S1/S1R
- ニコン Z 6で銀河のタイムラプスに挑戦
- 形はミラーレス一眼、中身はシネマカメラ、BMPCC4K(Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K)
- フルサイズミラーレス、キヤノンEOS Rの動画性能は如何に!?
- ニコン Z 7の大口径は動画性能アップにも繋がる
- 大きく進化した動画性能、FUJIFILM X-T3
- 動画編集作業を高速に行なうための特効薬
- ジンバル初心者にも気軽に使えて高機能、DJI Ronin-S
- 動画編集用コンピュータが欲しい!
- 動画撮影でF1.2大口径単焦点という選択、オリンパスM.ZUIKO PRO
- GH5Sの「Dual Native ISO」はやはりすごい
- 動画撮影でも富士フイルムの「色」への思想を感じさせるX-H1
- スチルもムービーも高性能なα7R IIIを導入しました
- HDR映像を撮影可能にするハイブリッドログガンマとは
- ニコンD850でタイムラプスムービーを極める
- 動画機能も確実に進化させてきたニコンD850
- フォトグラファーのための簡単絵コンテソフト「StoryBoard Creator」
- ますます実用的になってきた動画AF撮影/Panasonic LUMIX GH5③
- Lumix GH5の動画撮影機能をさらに検証する/Panasonic LUMIX GH5②
- スチルフォトグラファーのためのデジタル一眼レフ動画撮影ガイド/Panasonic LUMIX GH5①
- 特別編:動画撮影ならこの機能に注目 4Kムービー時代のカメラ選びのポイント
- 第46回 伝統の色と階調再現。それだけで欲しくなる!? 富士フイルムX-T2
- 第45回 iPad Airをカメラコントローラーにする「DIGITAL DIRECTOR」
- 第44回 「ただ者ではない」カメラ、ソニーα7RII
- 第43回 フォクトレンダーF0.95 NOKTONが動画撮影でも評判な理由
- 第42回 快適な4K編集のために「G-SPEED STUDIO」導入を検討する
- 第41回 高性能タブレット「VAIO Z Canvas」を使う
- 第40回 「SHOGUN」をGH4とα7Sで使ってみた
- 第39回 4K記録ができる外部レコーダー「SHOGUN」
- 第38回 オリンパスOM-D E-M5 MarkIIの「手ぶれ補正」は、かなり使える
- 第37回 軽量な一眼カメラに最適な本格派ビデオ雲台が欲しい
- 第36回 コンデジでも4K動画が撮れる! LUMIX LX100の実力
- 第35回 ストロボもLEDも測定できる「スペクトロマスターC-700」
- 第34回 FCP Xマルチカム編集の便利さを改めて実感
- 第33回 一眼ムービーの様々な「不可能」をこれ1台で解決!「NINJA BLADE」
- 第32回 日本語化&機能強化でさらに身近になった「DaVinci Resolve 11」
- 第31回 「QBiC MS-1」と専用リグで360°パノラマ動画に挑戦
- 第30回 一眼ムービーにベストマッチのALLEXスライダー三脚システム
- 第29回 動画で様々なフィルムのトーンを簡単に再現できるソフト
- 第28回 GH4を「ミニマル動画」でいかに使いこなすか!?
- 第27回 LUMIX GH4の性能アップは期待以上だった
- 第26回 NECのPAシリーズ、マスターモニタ化計画
- 第25回 シネマカメラBMPCCのRAWデータの実力
- 第24回 「DaVinci Resolve」、ただ今勉強中
- 第23回 話題のBlackmagic Pocket Cinema Cameraを使ってみた
- 第22回 ミニマル動画のワークフロー「アフレコ編」
- 第21回 ミニマル動画のワークフロー「編集編」
- 第20回 ミニマル動画のワークフロー「撮影編」
- 第19回 ミニマル動画のワークフロー「打ち合わせ、機材選択編」
- 第18回 LUMIX GH3は、想像以上に「撮れる」カメラ
- 第17回 一眼レフの足りない部分を補完するカメラ「LUMIX FZ200」
- 第16回 フレームレートとシャッタースピードの関係
- 第15回 一眼ムービーの撮影時の画質設定は?
- 第14回 SSD搭載でMacBook Proをメインマシン化計画
- 第13回 Xicato社の屋内照明用LEDを撮影に使いたい
- 第12回 Lightroomを使ってカラコレ
- 第11回 動画のバックアップはどうしていますか?
- 第10回 ビットレートを制するものは動画出力を制する!
- 第9回 画像の書き出し設定は目的によって使い分ける
- 第8回 ニコンD4を動画撮影で使ってみた
- 第7回 アンブレラを使った動画撮影の「Light Modify」を考える
- 第6回 動画撮影に適した光源とライティングを考える
- 第5回 デジタルカメラのためのオーディオインターフェイス「DC-R302」
- 第4回 未知の世界...音声、音楽、効果音
- 第3回 ムービー撮影ならではの単焦点レンズにこだわる
- 第2回 ゼロから覚えるのなら、「Final Cut Pro X」だ!
- 第1回 難しく考えず、スチル撮影の延長からスタート