2015年03月19日
平和精機工業 www.libec.co.jp
平和精機工業のビデオ用三脚「Libec」。歴史のあるブランドなのでスチルフォトグラファーでもご存じの方は多いと思いますが、その「Libec」からスライダー三脚システム「ALLEX」が発売されました。トライポッド(三脚部)、ヘッド(雲台部)、スライダー(レール部)の3つのパーツで構成されるシステムで、合体させるとレール移動+パン+ティルトの「3軸移動撮影」が可能になります。
これまで筆者の動画撮影スタイルとしては、三脚はスチルカメラ用のものを流用。カメラを三脚に固定するか、動きが欲しい時にはフルードの一脚を使っていました。確かにレールでのカメラ移動は魅力的ですが、ムービー用システムは大げさ過ぎて、持ち運びも含めて取り扱いが面倒だったり、動きが滑らかでなかったり、また高価過ぎたりで、一眼レフのムービー撮影にはどうも「ツボにはまらない」ものが多かったのです。
しかしこの「ALLEX」は、トライポッド、ヘッド、スライダーのキットで10万5,000円とお手頃。重量もすべて込みで5.8kg。全体がかなり軽くできているため、これなら一人でカメラと三脚を担いで撮影に出かけることができそう。早速、使ってみました。
全長80cmのスライダーでも映像効果は抜群、手持ちでは難しいアングルも手軽に撮れる
ヘッドを2つ組み合わせてスライダーを垂直にセット。スライダー全長80cm(移動距離70cm)でも、モデルの足下からバストアップまで写すことができた。 スライダーを床に置き、仰向けのモデルをローアングルで撮影。モデルに動きがなくても、カメラの移動で動きのある映像が撮れる。スライダー部の全長は80cm。実際のカメラ移動距離としては70cmほどになります。たった70cmと思うかもしれませんが、これが使ってみると、アングル移動による映像効果は充分に得られます。被写体との距離やレンズの焦点距離にもよりますが、人物でも立ちポーズのモデルの足下から顔のバストアップまで移動できます。
驚いたのが、中央の1点支持なのに、外部モニタを付けたニコンD4sをレールの端まで移動させても、レールが全くゆがまないこと。どうやらレールの構造にその秘密があるようです。スライダー機構も8個のベアリングによってスムーズに動き、トルクも自在に変更可能。この滑らかさのおかげで、私のような「初めてレール移動を試したフォトグラファー」でも、最初から流れるようなカメラワークを可能にしてくれました。
スライダーとムービー用ヘッドで「3軸移動撮影」が可能
システムの柔軟性も魅力です。ヘッドは下部が半球状になったボールレベラー型(動画用三脚で素早く水平をとるためのもの)ですが、3/8インチネジ穴もあるため、スチル用三脚にもつけることができます。これは嬉しい。スチル用三脚の使い慣れたエレベーターが使えるからです(通常、ビデオ用三脚にはエレベーター機構がない)。スライダーとヘッド2個を組み合わせれば、斜め移動や垂直移動も可能で、これにエレベーターの動きが加われば、かなり自由にカメラを動かせます。ただしスチル用三脚を使った場合、ボールレベラー機能は使えなくなります。
またスライダーも1/4インチと3/8インチのネジ穴がある他、両端に脚がついていて、そのまま直置きでの使用も可能。床に置いてのローアングル撮影や、テーブルなどに設置して撮影することもできます。
将来的に拡張ユニットも開発可能で、もっと長尺、あるいは短いレールの追加もあり得るそうです。その場合はレールさえ買い足せばすべてのパーツを流用できます。
カメラをレールで動かすことで、動画の表現は広がる。ムービーの撮影では当たり前のことなのかもしれませんが、これまでスチル用三脚を使い、カメラ固定で撮ることが多かった筆者は、実際にこの「ALLEX」を使ってみてちょっと視点が変わりました。アングル固定で被写体が動くインタビューやファッションのような撮影でも、被写体の動き+カメラの動きでバリエーションがつけられる。スチルのブツ撮りのようにまったく静止している被写体でも、カメラを動かすことで「動画として表現」できます。
レール機構はスチル撮影でも便利に使えそうですし、まだまだアイデア次第で、面白い使い方ができそうな三脚システムです。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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