一眼ムービーなんて怖くない!

スチルもムービーも高性能なα7R IIIを導入しました

解説:鹿野宏

外観はα7R IIとほぼ変わらないが

ソニーから発売されたα7R IIIは、色々な意味でエポックメイキングなカメラです。α9で高く評価された操作性や高速オートフォーカス、タフなバッテリーを始め、α7R IIから引き継いだ約4240万画素という高画素、さらにピクセルシフトマルチ撮影では、出力画素数は4240万と変わらないものの「通常のワンショット機に対して1.6倍の解像能」を誇り、動かない被写体を撮るのであれば、感覚としては9000万画素機と言っても差し支えない。「これは仕事で使える!」と思い、さっそく購入をしてしまいました。

とは言え、このコラムのテーマはスチル写真ではなく「一眼ムービー」。もともとの購入動機が静止画性能だったため、動画機能はあまり期待していませんでしたが、動画もなかなか使える機能が満載なので、気がついた点を挙げてみます。

ソニー α7R III
img_products_dslr_nofear55_01.jpg
有効画素数約4240万画素、ISO感度は動画撮影時100-32000相当。外観はα7R IIとほとんど見分けがつかない。α9にはある軍艦部向かって右側の撮影モードダイアルが省かれているのが、なんとも残念。カードスロットはSD UHS-II/UHS-I 対応のダブルスロット。マルチ/マイクロUSBまたはUSB Type-Cでの接続では、USB給電、本体内蔵バッテリーのチャージができるのも便利な点だ。


ニュートラルとHLGの違い

まず前回も触れたHDR動画に対応するHLGモードを搭載した点。HLGとニュートラルモードそれぞれで、いつものチャートテストをしてみました。HLGモードは10絞りというさすがのダイナミックレンジ。高感度性能はα7R IIで感じた限界値とほぼ変わらない印象でしたが、ノイズ処理、画像生成力が向上しているようです。

HLGで撮影
HLGモードの特性を見るため、いつもの1/3刻みステップチャートを動画撮影、ニュートラルモードと比較してみた。いずれも撮影感度はISO100。それぞれのカーブに注目。
img_products_dslr_nofear55_02.jpgHLGは30ステップオーバー、10絞り以上のダイナミックレンジを持っていて、HDRディスプレイで見るならならそのダイナミックレンジを活かすことができ、通常のモニター(SDR)でもそれなりに見ることができるので、後工程を考えないでよい使い易いモードだと感じる。ただしシャドー部はノイズでブレてしまっているのが見える。高感度はISO6400あたりが限界か? 暗い場所で使用するというよりは、輝度比が高く彩度も高めのシーンに有効だろう。

ニュートラルモードで撮影 img_products_dslr_nofear55_03.jpgニュートラルモードのダイナミックレンジは7絞りほど。動画撮影でも光が安定した状態(7絞り以内に光の状態が納まる)なら問題ない。高感度にしても21ステップ以上の暗部が潰れるためノイズは気にならない。後工程も最小限で済むので、そう考えると使い勝手の良い設定だと改めて感じた。


APS-Cクロップの4Kモードをサポートしているので、同じレンズが1.5倍の望遠として利用範囲が広がります。静止画と違って動画の場合は、APS-Cでもフルサイズでも得られる画素数は同一なので、そのメリットは大きい。α6300用に購入していたE PZ 18-105mm F4 G OSSが電動ズームも使えて大活躍しています。加えてE 10-18mm F4 OSSという超広角ズームの2本でほとんどの撮影が完了します。画素数を最大限に使用したいピクセルシフトの静止画撮影のみ、フルサイズのレンズを引っ張り出すというかなり贅沢な使い方です。


クイック動画機能

ハイスピード撮影は、フルHD限定ですが120p対応。同様にフルHDでは1秒間に1、2、4、8、16コマというクイック撮影も可能です。秒間1コマ~2コマのムービーだとタイムラプスとどう違うのかわからなくもなりますが、動画でありながらスローシャッターを切れるので変わった表現ができます。このクイック撮影で4K撮影ができないのは残念なところ。ぜひ実現させてほしいと思います。

img_products_dslr_nofear55_04.jpg1秒間1コマを30fpsに編集するというクイック動画をHLGモードで撮影してみた。ここではただの静止画写真なのだが、動画の仕上がりはまさに「やや短めのタイムラプス動画」だ。この表現力は被写体によってはかなり面白い動きをしてくれるだろう。太陽がかぶる雲とビルの日陰という、かなり広いダイナミックレンジを持つ被写体だったのでHLGで撮影してみたが、見事に再現してくれた。

瞳AFは静止画では驚くほどの補足力を発揮するのですが、残念ながら現在は動画では使えません。動画撮影で滑らかに瞳に合焦し続けるには、まだ時期尚早なのかもしれません。とはいえ、全体にオートフォーカスの補足性能はかなり高くなっているので、「動画でAFが使える一眼カメラ」という評価はできると感じました。

手振れ補正は5.5段に進化。カメラを手持ちで構えて静止状態での撮影では、動画でもかなりの効果を確認できます。普通スタビライザーを使うような歩きながらの手持ち撮影も、短い時間であればなんとか使えるレベルをクリア。ワンポイントの使い方になると思いますが、便利なことに違いありません。

その他、新しいソフトウェアImaging Edgeも発表されました。リモート、ビュアー、現像の3つのソフトウェアから成りますが、動画撮影的に嬉しいのは、静止画のみならず動画もPCリモートで撮れる(ティザー撮影できる)ようになったことです。PCリモートはUSB3.1 Type-Cを採用。データやり取りと電源の供給が可能なため、1本のケーブルでほぼ無制限に撮影可能になります。

α7R IIIが完成型とは決して思いませんが、静止画では高速連写、瞳AFでの人物撮影、高感度撮影、ピクセルシフトによるジャギー、モアレのない高品質なブツ撮影、動画では4K撮影やHLG撮影、120pの4倍スローモーション(フルHD)も可能。筆者のように商品撮影や美術品の撮影、出張撮影やロケのスナップ、動画も撮るという仕事には1台で対応できるカメラなのです。




※この記事はコマーシャル・フォト2018年2月号から転載しています。


鹿野宏 Hiroshi Shikano

デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。

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