2016年07月05日
VAIO株式会社が満を持して放つタブレットPC「VAIO Z Canvas」。2015年5月の発売前にテスト機を使いました。その主なスペックは、4コア/8スレッド対応の第4世代Core Hプロセッサ(Core i7-4770HQ)、メモリーは最大16GB。グラフィックアクセラレーターはオンボードですがIris Pro Graphicsを搭載し、Adobe Premiere Pro もサポートしています。記憶媒体はPCIe対応SSDで、書込速度900Mbpsをたたき出し、最大1TBを選択可能。
12.3型のディスプレイはAdobe RGBを95%カバー。長辺2560pixelという画面解像度は通常の30インチサイズのディスプレイとほぼ同等。それゆえ画面のピクセルピッチは250dpiと印刷並の高精細さです。画素数でいうと436万画素となり4Kの半分強になります。
OSはWindows8.1を搭載。メモリー食いのアプリケーションでなければ約8時間はバッテリ駆動可能。これだけてんこ盛りのスペックで重量は1キロちょい 。印象では、かなり乱暴な言い方になりますが、15インチMacBook Pro Retinaにデジタイザースタイラスペンで操作ができる436万画素ディスプレイが付いているといった感じです。
Adobe PremiereやPhotoshopの作業環境をVAIO Z Canvasで「外に持ち出す」
「VAIO Z Canvas」のラインナップは、メモリーとSSD容量の違いで3タイプ。動画を編集するメインマシン並に使いたいなら最高スペック16GBメモリー/1TB SSDのチョイスとなるだろう。市場価格(ソニーストア)は16GBメモリー/1TB SSDタイプ399,800円(税別)。16GBメモリー/512MB SSDタイプ319,800円(税別)。ディスプレイのコントラストは高めで野外でも見やすい。専用キーボードは着脱式。実際にキーボードを付けると、見た目はまるで普通のノートブック(写真右)。 製品詳細:vaio.comこの「VAIO Z Canvas」は、映像クリエイターやCGクリエイターを対象に「外に持ち出して使えるPC」を目指したということですが、通常の私の作業環境はMacBook Proの最上位モデルをメインマシンに、事務所と自宅では30インチのディスプレイに接続して使用。ロケや外部での作業でも、そのままMacBook Proを持ち出して使っています。今回のテストでは、そのMacBook Proの代わりに「VAIO Z Canvas」を持って野外で撮影をしてみたのですが、これが見事にはまりました。
ソフトはAdobe Premiere Pro CC(WinマシンのためAppleのFinal Cut Proは使えません)、Photoshop CC、Lightroom CCをインストール。また内蔵のSSDの容量が心許ないので、外付けの1TBのSSDを別に用意しましたが、これはMacBook Proの時も同様です。結果、8千万画素級の静止画、フルHDの動画、あるいは4Kであっても2〜3分のショートムービーなら、充分に「外で持ち歩くメインマシン」として使えると感じました。この程度の作業であれば、画像処理も書き出しも非常に高速です。
ただし長尺の4K動画や数億画素の超高精細画像をハンドリングする場合は、やはり 「VAIO Z Canvas」だけでは荷が重く、あくまで外部作業用サブマシン。編集作業は充分なメモリーとビデオボード、高速なディスクアレイを搭載したメインマシンが必要でしょう。
撮影した動画を簡易編集して確認、このスマートさがタブレットPCならでは
撮影した動画をSDカード経由で「VAIO Z Canvas」に取り込み、Premiereで表示して確認。このサイズの画面ではさすがに本格的な編集作業とまではいかず、事務所に帰ってから30インチクラスのモニタに表示しての作業となるが、フルHD程度の映像であれば「VAIO Z Canvas」だけで、ハンドリング可能。何より、映像を見ながらモデルに動きを指示したり、クライアントに確認を取るような場合、タブレットPCのスマートさを実感できる。 Model:NANAKO
高精細なディスプレイはコントラストも高く、賛否両論はあるかもしれませんが、タブレットとして明るいオフィスや屋外での使用を考えると、これはこれで正解だと感じました。暗めのスタジオ内での使用時には、輝度を落とすことで対応が可能なのですから。
PhotoshopやPremiereをタブレットとペン操作で使うのはほとんど初めての経験で、当初はどう使えるのかわからなかったのですが、ロケ中に映像を確認したりプレゼンしたりするようなシーンでは、片手で持てて、ノートブック型よりもはるかに便利だと感じさせられました。上部左に配置されたボタンから色モードを呼び出して、5000ケルビン/6500ケルビンを切り替えられます。
入出力ポートも豊富で、miniDisplayPortにHDMI出力、USB3.0×2ポート、1000BASE-Tの有線LANなどが本体側面ありますが、個人的な希望としてはHDMI入力ポートが欲しかった。撮影した映像をHDMI経由で直に「VAIO Z Canvas」に取り込み、高いビットレートでエンコードして記録し、そのまま編集作業。HDMI入力のためのチップセットがどれだけ大変かわかりませんが もしそれが可能なら、とんでもないマシンになるのではないでしょうか? 高性能タブレットが、一気に動画の世界でも受け入れられると思うのです。
※この記事はコマーシャル・フォト2015年7月号から転載しています。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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