2014年06月26日
4回にわたってお付き合いいただいているミニマル動画実践編「ピラティス・メソッドのDVD制作」、今回でようやく最終段階。微調整も終え、テロップなども入って、大体の編集は完了しています。
ちなみにFinal Cut Pro X(以下FCP X)には様々なテロップパターンが登録されていますが、なかなか好みのものに出合えません。そこでパターンからイメージに近いものを選び、それを「Motion」でアレンジするという方法をとっています。「Motion」は「Final Cut Studio」パッケージに含まれているモーション・グラフィック用ソフトウェアで、フォントや色などを好みの形に仕上げて登録すると、それがFCP Xパレットにも表示されます。テロップ用の「白抜き黒縁」文字などは、よく使用するフォントサイズで登録しておくと、とても便利です。
さて、ここからが今回のメインテーマ。アフターレコーディングです。何度も書きましたが、撮影現場では蝉の声、カラスの鳴き声がじゃまをして、音声は「商品としては使いものにならないレベル」でしか記録できなかったのです。
実は、アフレコは初めての経験。音声をICレコーダなどで別途記録してから、FCP Xで編集済みの動画と合わせることも考えましたが、FCP Xには「アフレコ機能」があります。PCにマイクをつなぎ、FCP Xで編集済みの動画を再生しながら、直接、音声をタイムラインに記録できるのです。この方法ならばリアルタイムで音声のトラックが作れるし、ナレーションにミスが出た場合も、再度、その部分だけ動画を繰り返して録り直し。録り直した音声は別トラックとして同じ時間軸に並ぶので、後で音声を切り貼りして編集する際にも便利です。
Final Cutのアフレコ機能でナレーションを録音左がゼンハイザー社のダイナミックマイク「e 835」 。アナウンスやボーカルによく使用される定番マイクで8,000円前後。際だった特徴はないものの艶のある音色と癖のない中音域が魅力。手前がTASCAM社の オーディオインターフェイス「US -322」。価格は14,000円程度。
問題は予算的に録音スタジオを借りることが難しく、筆者の撮影スタジオで録音するしかなかったことです。防音設備などは当然なく、常時稼働しているサーバなども置いてあるため、ホワイトノイズは確実に存在しています。簡易的な防音も考えましたが、ネットを検索しているうちに、気になる情報を発見しました。
それは高性能なコンデンサーマイクだと、性能が良すぎて「遠くのノイズもきちんと拾ってしまう」ということです。マイクには、「コンデンサータイプ」と「ダイナミックタイプ」の2種類がありますが、私が通常、同録の際に使っているガンマイクやピンマイクはコンデンサータイプ。周囲の臨場感や空気感ごと、音として記録するのにはいいのですが、声のみを録音したいナレーションのアフレコには向いていません。
そこで注目したのが、カラオケや司会などに使うダイナミックタイプのマイクです。未だにダイナミックマイクが生き延びている理由の一つに「近くの音は確実に拾うけれども、遠くの小さな音は拾わない」という特質が評価されていることを知りました。さらに口をつけるようなポジションで話すので、ナレーターの声が大きくなり、入力レベルを下げることができます。ナレーターの声に対して、椅子のきしみや道路を通る車の音など、周囲の音はノイズです。このノイズを消すことができない場合、メインの音を少しでも大きく記録できれば、ノイズを処理するのは簡単になるはずです。
そこで、早速、ゼンハイザー社のダイナミックマイク「e 835」と、Macにマイクの音声を入力するためのインターフェイス、TASCAM社の「US -322」を購入することにしました。「e 835」はアナウンスやボーカルに使用される定番マイク。「US -322」はダイナミックマイク、XLR端子をはじめ、コンデンサーマイクでもギター直でも入力可能なUSB接続のオーディオインターフェイスです。USBの電力で駆動し、Mac用のミキサーパネルでコンプレッサー、ノイズサプレッサー、ディエッサー、エキサイター、3バンドイコライザー等の細かい調整も可能な優れものです。
録音時、さすがに音のうるさいエアコンは消しましたが(夏の暑い盛りでこれはかなり厳しい状況でした)、それ以外にもノイズ満載の室内で録音にもかかわらず、ほとんどノイズは記録されていません。かすかに残ったノイズはわざわざ消さなくてもよいレベルでしたが、弱めのノイズリダクションで簡単に消えてしまいました。
これで制作は完了ですが、最後に少々裏技的なTIPSを紹介しましょう。
今回の撮影では「人通りが少ない、緑が映える場所」を選んだのですが、ロケ場所は普通の公園で、通行人を制限できない状況。通行人がメインの被写体にかぶったりした場合はさすがに撮り直しましたが、向こうの林を人が横切ったりもします。
幸い、今回の撮影は固定アングルが多いため、問題のない別のクリップをタイムラインに並べ、人が横切る部分のみマスクを切って、Photoshopのレイヤー合成のように、問題部分を消していきました。実際には動画なので、風による葉の動きなどが元の映像とは違うのですが、遠景の場合はほぼ違和感なく消せます。
ただし遠景の通行人でも、メインの被写体の手や足にかぶるような時は結構大変でした。現場ではあまり気にならないと判断したのですが、いざ編集してみるとやはり気になります。これらはPhotoshopのタイムラインを使用して、消し込み用の素材をレイヤーマスクで調整しながら合成しました。シーンによっては1コマずつ処理した箇所もあります。動画の本職の方々はキーイングを使用して人物を切り抜いてしまう手を使うのでしょうが、私には馴れたPhotoshopで作業の方が楽。かなりの精度で消し込むことができました。
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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