一眼ムービーなんて怖くない!

形はミラーレス一眼、中身はシネマカメラ、BMPCC4K(Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K)

解説:鹿野宏

初代のポケットシネマカメラはイメージセンサーも背面液晶も小さかったのですが、Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K(以降BMPCC4K)は、センサーサイズもボディサイズも大きくなって登場です。基本的に「4Kシネマカメラの心臓部を凝縮したボディパッケージ」というスタンスのカメラ。いわゆる「ムービーも撮れる一眼(スチル)カメラ」とはかなり性格が異なると考えながらテストを始めたのですが、結果は期待を大きく上回る「かなり使える一眼ムービーカメラ」でした。

マイクロフォーサーズマウントに大型背面液晶

Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K

img_products_dslr_nofear65_01.jpgマイクロフォーサーズマウントを採用。充分なレンズの選択肢がある。サイズはポケットカメラというにはやや大きいが、大画面で使いやすい背面液晶、また長時間連続稼働を可能にする冷却ファン内蔵の結果であろう。マウントの左右に配置されたマイクも高音質だが、内蔵ファンのノイズを拾ってしまうのが玉に瑕。もっとも一定の周波数なので、ある程度キャンセルすることは可能。

DCI4KもUHD4Kも最大60fpsのフレームレートで撮影可能。FHDであれば最大120fpsのフレームレートを確保しています。記録方式はProRes422(IPB)とRAW(ALL-I)。ProRes422は、ビットレートが高くLog撮影を行なっても充分な階調を望める方式の「ProRes422 HQ」、汎用的な「ProRes422」、容量も小さな「ProRes422 LT」、さらにどうしてもディスク容量が稼げない時には「ProRes422 Proxy」という選択肢が用意されています。

実際に使用するまでは「バッテリーが小さくて持たない」という評価を聞いて心配をしていましたが、USB経由による充電・給電をサポートし、付属のAC電源からも充電と給電が可能。AC電源がある場所なら内臓ファンによる強制冷却も手伝って無限に駆動可能です。予想していたよりもはるかに「電力のことは考えずに長時間録画が可能なカメラ」と言えそうです。

img_products_dslr_nofear65_03.jpg 電源、HDMI、USB-C、マイクロXLR、ミニステレオジャック、イヤホンなどの端子は左に集中。

記録メディアはCFast2.0、SDカード(UHS-II)、それに外付けSSDが使えます。内部に格納するメディアはいずれも高価なため、個人的にはあくまでそちらは非常用として、USB-C経由で外部SSDに直接記録する方法が正解のような気がします。USB-C経由で高速な2TBフラッシュストレージを接続すれば、ProRes422 UHD 4K30pであっても2時間の収録が可能となります。

img_products_dslr_nofear65_04.jpg メディアスロットは右側。CFast2.0、SDカード(UHS-II)に対応。

マウントはマイクロフォーサーズ。8mm(35mm換算で16mm)ほどの超広角レンズもそのまま画角で使用できるのが、旧タイプのBMPCCと大きく異なる点でしょう。もう「広角レンズに不自由するカメラ」ではありません。センサーはパナソニックGH5Sとよく似た特性を持ち、デュアルネイティブISOです。やや広めの面積を有しており、物理的な手振れ補正機能がないレンズでも「余ったセンサーの周囲」を活用してデジタル的にスタビライズする機能まで搭載されていました。

すでに「ポケット」とは言えないサイズのボディにやや驚き、あまりにもボタン類が少ないので使い勝手を心配していたのですが、大きなタッチスクリーンのおかげで操作に苦労はしません。タッチスクリーンを不足なく使うためにはこれだけのサイズが必要なのだと教えられた気がします。この辺りは一眼カメラとは発想が異なり、基本的にシネマカメラなのに、「大きなタッチスクリーンを採用し、なおかつコンパクトにするため」に一眼カメラスタイルになったと考えるべきかもしれません。

img_products_dslr_nofear65_02.jpg 5インチ背面液晶。サイズが大きく使いやすい。

基本的にこのカメラはFilmモード(log撮影)でRAW撮影を行ない、外部バッテリーを使用、HDMI出力を外部レコーダーで記録。必要に応じてスタビライザーや三脚を使用して高品質な動画撮影をするカメラなのでしょう。一方でミニマル動画撮影でも、イベント、舞台、対談の取材などで、最初から最後までを記録しておくセンターカメラとして能力を発揮してくれるのではないかと感じました。三脚にのせ、電源は付属のACコンバータから。記録は外部SSDに。UHD納品ならDCI4Kからトリミングしてズームも可能です。

「一眼(スチル)カメラ」のようなオールマイティさはないですが、用途次第でミニマム動画でも使える高画質カメラ。この値段(147,800円税別)で、最低でも4~5年間はシステムの中核で活躍できるカメラだと言えます。


Film、Video、Extended Videoの3種類のモードを搭載

色彩/ダイナミックレンジの違いで「Film」「Video」「Extended Video」の3種類のモードが用意されている。

img_products_dslr_nofear65_05.jpg

BMPCC4K ダイナミックレンジ
各モードのダイナミックレンジの状態(ISO200撮影)。「Film」は約13ストップのダイナミックレンジ。「Extended Video」でぎりぎり10ストップ。「Video」は8ストップ程度。


Film
img_products_dslr_nofear65_06.jpg「Film」はシネマネガフィルムのダイナミックレンジを摸したlog撮影。撮影環境が激変するロケや高品質な仕上がりが必要な時にRAW撮影と併用して最高水準の録画を可能とする。ただしLUTを適用した処理が前提。容量も膨大なものになる。
Video
img_products_dslr_nofear65_07.jpg「Video」はREC709に準じた色空間と色彩設計。そのまま使えて急ぎの単発納品向き。かなり鮮やかな色彩設計のためハイライト飛びやシャドウつぶれは救えないかも。

Extended Video
img_products_dslr_nofear65_08.jpg
「Extended Video」は両方の長所を兼ね備えたモード。広い階調と使いやすい色彩設計。カラーコレクションが不要な場合、筆者のワークフローではこれがベスト。このモードを発見した時に「このカメラは私にとって使えるカメラだ!」と思った。

BMPCC4K 撮影モード



羽田空港の夕景と夜景を高感度撮影

夕景
夕景はISO6400で撮影。ISO6400でも飛行機の白い胴体部分やグレイの滑走路部分は綺麗な描写になっている。手持ち撮影だが、それなりに電子スタビライザーが効いている。 UHD4K ProRes 422 1/50 F8 ISO6400 Filmモード 
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6


夜景
夜景は超高感度となるISO12800で撮影した。カクテル光線なので色味がやや暴れているし、拡大するとはっきりノイズが見えるが、動画としてはそれほど気にならなかった。 UHD4K ProRes 422 1/50 F8 ISO12800 Filmモード 
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6




※この記事はコマーシャル・フォト2019年3月号から転載しています。


鹿野宏 Hiroshi Shikano

デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。

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