2015年10月08日
4.3インチのタッチパネルはスマホのような操作感
www.sekonic.co.jp
光の成分、特に色(波長)の情報を得るためには、3色フィルター方式と、プリズムを使って光を波長毎に切り分ける分光測定方式があります。分光方式は精度の高い測定が可能ですが、従来の分光光度計ではストロボのようなフラッシュ光は測定ができません。さらに定常光であってもLEDは波長がピーキーであるために(突出するブルー波長があまりに狭く強い)、正確な測定が難しく、一応、測定値は出るけれど「実際の見た目の色とは違うのでは?」ということになってしまうのです。
これはLEDを光源に使う機会が多い筆者にとって、大きな問題でした。特に世の中に多く出回っているLEDは(撮影用と謳っていても)、「輝度は稼ぐけれども、赤やオレンジの波長を持たず、発色と明るさが劣化していく劣悪なLED」の場合もあり、それを光源にして撮影しなければならない大変さといったら 。
その問題を解決してくれるのがセコニックから発売された「スペクトロマスターC-700」。現時点で世界で唯一、分光方式でありながら、フラッシュ光の測定が可能なカラーメーターです。もちろんLEDや蛍光ライトなど「最近の多用されるようになった定常光撮影照明機材」も、正確な測色が可能です。
「C-700」最大のポイントは測定素子にCMOSイメージセンサーを採用したことでしょう。数年前、カメラの開発技術者たちと懇談している時に「今のデジタルカメラは、それ自体が高度な測定器みたいなものだから 」というような話に「うんうん」と納得していたことを思い出します。そうです。測定部に蓄積型のCMOSセンサーを使ってしまえばいいことなのです。
分光の仕掛けはプリズムではなく、 CDの表面のような筋に反射させて分光する「グレーティング」という手法をとっているようです。
光量の大きなストロボなどを計るための「NDフィルター」や、わざわざフタをしなくても「ブラックキャリブレーション」(ダーク補正)が取れる「仕掛け」を内蔵。受光部周囲のリングを回すことで、NDフィルターモード、ブラックキャリブレーションモードを切り替えられるあたりに、「日本の機械」らしい仕上げを感じます。
5ルクスから20万ルクスまでの幅広い明るさを測定可能。色温度、色偏差の数値、分光グラフ、演色指数、フィルター補正値、ホワイトバランス補正値などを大きな液晶画面で表示。たとえばLEDと太陽光、LEDと電球という最悪の組み合わせで撮影しなければならないシーンでも、最適なフィルターを指示してくれるのです(この場合、フィルターは光源に掛けることになります)。最悪の場合は、ひと目でわかる分光グラフをクライアントに見せて、悪条件を納得してもらう(!?)なんてことも可能でしょう!
光源を99個までメモリーできるので、複数の光源を測定してバランスを取る、あるいは特定のライトの経時変化を観測することも可能。同時に4個までの計測データを表示できるので、通常のライティングでは必要充分です。
ホワイトバランス機能を持つデジタルカメラで撮影をするようになり、カラーメーターをあまり使わないという人もいます。実際にスチル撮影なら、異なる発色の光源が混在するシーンであっても、後処理で部分的な色補正が可能です。しかし動画の場合はこれが大変なのです。撮影時に現場で使用する照明器具のキーライトに対する全ての偏差を測定し、そのまま続行するか、あるいはフィルターでバランスを取り直すべきか。カラーメーターでそれを事前に判断し、きちんとホワイトバランスを取ることは、カラーコレクション作業の大幅な短縮に繋がります。
スタジオなどでストロボヘッドやHMIを借りる時、これでバランスがとれた物だけをセレクトすることもできます と言うか、レンタルスタジオさんにも常備して欲しい機材ですね。
早速、自社スタのLEDライトとPCの液晶ディスプレイを計測
以前、この連載でも紹介したXicato社のLEDライトモジュールを使った自作ライトを測定。このLEDは特殊構造でバランスのよい分光カーブを持っているが、C-700での測定もご覧の通りの素晴らしい結果。分光カーブは画面いっぱいに表示することも可能。この1冊で「ジンバルのすべて」が奥の奥までわかる一眼&ジンバル スピードマスター
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鹿野宏 Hiroshi Shikano
デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。
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