一眼ムービーなんて怖くない!

動画撮影を本気で考えた一眼カメラ LUMIX S1H

解説:鹿野宏

パナソニックのフルサイズミラーレスLUMIX Sシリーズの中で、特に動画撮影を重視したLUMIX S1H。有効2,420万画素フルサイズセンサーのほぼ全域を使って6K動画の撮影可能。カラコレを前提としたV-log撮影も標準搭載された「動画制作プロダクション向きのカメラ」です。そのS1Hを今回は約1ヵ月にわたりお借りしてテストすることができました。

LUMIX S1H+LUMIX S PRO 24-70mm F2.8

img_products_dslr_nofear73_01.jpg有効画素数2,420万画素のCMOSセンサーを搭載したフルサイズミラーレス機。6K(3:2)/23.98p、5.4K(3:2)/29.97p、5.9K(16:9)/29.97pの動画撮影が可能。LUMIX S1、S1Rと比較しボディサイズはやや大きくなり重量も150gほど重くなったが、6K撮影のための放熱対策だと思われる。熱源であるイメージセンサーと背面液晶の間を風が通る設計で、ファンは振動とノイズが極めて小さいものを採用している。セットでテストしたLUMIX S PRO 24-70mmは、「CertifiedbyLEICA」のS PROレンズ。6Kで撮影した動画を見ると、周辺まで確実に解像し、フリンジもない。ズーミング中のAFトラッキングもなめらかで、フォーカスブリージングもほとんど見られなかった。

ミニマル動画(小人数撮影、機動力重視)をメインとする筆者にとっては、そもそも動画撮影重視のカメラにフルサイズセンサーは必要か?4K動画を撮影するために必要な画素数だけで考えれば6K/24.3Mはオーバースペック、APS-Cサイズのセンサーで充分なのでは?という疑問を持ちながら使い始めたのですが、撮影をしていくうちにフルサイズ、6Kの恩恵がわかってきました。

センサーのほぼ全域を使った6K(アスペクト比3:2、5952×3968)のフレームレートは23.98p。これは映画撮影を見据えているのでしょう。29.97pが欲しければ5.4K(3:2、5376×3584)という一回り小さなクロップサイズを選択可能です。5.9K(16:9、5888×3312)も選択できて、こちらも29.97pです。

上記のモードはすべて4.2.0ですが、10bitの高品質な撮影が可能です。H.265を採用していることもあり、思ったよりも小さい容量で記録できて、UHS Speed Class3のSDカードで問題なく記録できました。

実際に撮影してみると、6K動画は圧倒的に巨大です。この大きなサイズがもたらすメリットは、編集時の柔軟性です。4K動画に仕上げるとしてもトリミング、パンニング、ズーミングが可能。色ノイズの処理も画素数が多い方が精度が上がり、もちろん適切なオーバーサンプリングが可能になります。

巨大な6K動画


S1Hの6K動画。青い枠が4K、グリーンの枠がフルHD。これだけ余裕があれば4K仕上げでも編集でパンニングやズームが可能。6Kで撮影した風景の中に小さく写っている子供達をフルHDで見ると、洋服の模様、目鼻立ち、背景の草むらなどきちんと解像していることがわかる。

センサー全域を使用するS1Hでは、撮影時のモアレの発現率を下げるためローパスフィルターを採用しています。静止画の世界ではローパスフィルターを外すのが近年の傾向ですが、「失敗しない動画撮影」という考え方は、プロが使う動画カメラとして重要なことだと感じます。

SH1のダイナミックレンジ

いつものチャートで各感度のダイナミックレンジをチェックしました。モードは「フラット」。筆者の印象ではISO100~3200は10ステップオーバーで画質も全く問題なし。ISO6400でも10ステップを確保。ISO12800も9ステップで充分使えるという結果。ISO51200の画質は「少し悩ましい」という感じですが、それでも7ステップはあります。6Kでありながら、これだけのダイナミックレンジを確保することが、フルサイズセンサーにこだわった最大の理由だと感じました。

これがV-log、あるいは将来的にRAW撮影(※)となると、14ステップオーバーという途方もないダイナミックレンジを10bitで記録できるのです。

※ATOMOS社製「NINJA V」などへHDMI経由で最大5.9K、29.97pの動画RAWデータ出力を可能にするファームウェアを開発中。

その他、長時間録画可能を実現したヒートシンクと静音ファン、1分ごとにファイルを分割する動画分割記録、チルトフリーアングル、ボディ前後に配置されたタリーランプ、リグ撮影では重宝するサブ録画ボタンなど、動画に限れば以前に検証したS1を凌駕する完成度で、撮影するほどに「各所に配置された動画を撮影するために必要な機能」に感心し、動画を編集してみれば「玄人仕様」の品質にチューニングされたデータに驚かされました。

タリーランプとチルトフリーアングル

タリーランプ(収録状況を示す表示灯)をボディの前面と背面に搭載。録画がスタートしていることを自分で確認できるだけでなく、演者にもそれを告知することができ、シーンに応じてそれぞれを個別に消灯することも可能。

img_products_dslr_nofear73_02.jpgボディ前面のタリーランプ。

背面の液晶は新開発のチルトフリーアングル機構。フリーアングルにチルトを組み合わせることで、接続したHDMIケーブルなどに干渉せず液晶を回転可能。

img_products_dslr_nofear73_03.jpgHDMIケーブルなどと干渉せずに動かせる背面液晶。

これまで筆者は「一眼動画にとって解像度やダイナミックレンジは必要最低限の能力があればいい」という判定をしてきたのですが、S1Hは全てにおいて一段高いレベルの解像度やダイナミックレンジを実現してきたのです。

実売50万円を切る一眼デジタルカメラですが、ARRIやREDなどの映像制作向けのカメラと「対等に渡り合う」ことを目指して開発されたのではないかと思うくらい、S1Hは「動画撮影を本気で考えた一眼カメラだ」と言えそうです。


人肌モード、GH5S vs S1H

GH5S
img_products_dslr_nofear73_06.jpg
S1H
img_products_dslr_nofear73_07.jpg
人肌モードの色味をGH5Sと比較してみた。S1Hでは強い赤みが消え、非常に素直な肌色にチューニングされたようだ。人物が入った動画の場合、肌の色彩に納得がいくと、後工程は驚くほど簡素化される。このままでも全く問題ないが、ここから「好みの肌色」に持っていくのにそれほどの苦労はないだろう。個人的にはウエルカムな変更だ。

夕日のタイムラプス


高感度、高ダイナミックレンジのおかげで幅広い輝度比の撮影もいい感じでこなせる。撮影が「無理そうな環境」でも綺麗に仕上がられるカメラを選択するのもカメラマンの腕!




※この記事はコマーシャル・フォト2020年1月号から転載しています。


鹿野宏 Hiroshi Shikano

デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。

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