一眼ムービーなんて怖くない!

第16回 フレームレートとシャッタースピードの関係

解説:鹿野宏

動画に使用される代表的なフレームレートは、日本やアメリカで標準の「60fps、30fps」、ドイツを中心としたヨーロッパ、オーストラリアなどの規格である「50fps、25fps」、映画の世界で標準化された「24fps」などがあります。いずれも「過去のTVや映画の流れを汲む」もので、特に60fpsは当時のアメリカで使用されていた電源の周波数に由来します。日本でTV用の素材を撮影するのであれば、30fps(29.97fps)が正解。しかしネット配信、デジタルサイネージをはじめとするコンピュータで再生する動画なら、どのフレームレートでも問題はありません。筆者の仕事は主にこの分野となります。

動きを滑らかに再現するためには高いフレームレートが良いのですが、高フレームレートはデータの容量が当然ながら増加します。インターネットの世界でも、いずれ50fpsや60fpsが主流になると思いますが、現状では25fps、30fpsが「配信しやすい」フレームレートであるのは事実。

そこで、動きのある被写体でも少ないフレームレートで滑らかに見せなくてはなりません。そのためのテクニックが「遅めのシャッターで撮影されたブレたコマ」です。

低いフレームレートではブレた写真の方がいい?
モデル:MEGU
img_products_dslr_nofear16_01.jpg 30fps、1/30秒で撮影
img_products_dslr_nofear16_02.jpg 30fps、1/60秒で撮影
通常フォトグラファーは「ブレていない」写真を仕上げるために苦労する。しかしフレームレートが低い動画では、速い動きの被写体の場合、左画像のようにブレている方が滑らかに見える。右のように静止した画像の連続だと、被写体がちょっと速い動きをすると「パラパラ漫画」になってしまうのだ。「速い動きはシャッターを速くしない」(むしろ被写体の動きが遅い時は、シャッターが速くても違和感がない)というスチルとは逆の考え方となる。

一眼レフでムービー撮影をする場合、撮影フレームレートを設定すると「使用できるシャッタースピードの下限」が決まります。たとえば30fpsなら1/30秒より遅いシャッターは選択できません(これはちょっと考えると当然のことですね)。

逆にシャッターを速くする分には制限がなく、カメラのスペックに応じ、いくらでも速いシャッタースピードで撮影することが可能です。しかし30fpsといった低いフレームレートでは、無闇にシャッタースピードを速くしても滑らかな映像にはなりません。確かに速いシャッターであれば、1コマ1コマはブレのない静止した状態の絵になりますが、動きが激しい被写体の場合、それを動画として連続再生すると、動きがぎこちなくなりパラパラ漫画のようになってしまうのです。

同様に、高フレームレート、高速シャッターで撮られた画像も、撮影時の高いフレームレートで見るのならいいのですが、ネット配信のためフレームレートを下げると、動きがぎこちなくなってしまいます。

なので筆者は、選択したフレームレートで設定できる下限のシャッタースピードで撮影することを基本としています。インタビューや商品解説、取説などの通常の被写体であれば「30fps、1/30秒」。この設定は、DVDであってもTVであってもインターネットであっても、そこそこに対応できます(ダンスなど特に被写体の動きが速い被写体で、ブラさずに追いたい時は「60fps、1/60秒」の選択をすることもあります)。

1/30秒というシャッタースピードでは、少しでも動いている被写体は「ややブレた画像」になりますが、この集合体で構成された動画は、1秒間に30コマという低いフレームレートでも「滑らか」に見えるのです。非常に速い動きの場合は追いつけませんが、普通に歩いていたり話をしているシーンでは、「必要十分」といえます。

筆者の経験では30fpsの場合、規定のシャッタースピードの2倍程度(1/60秒)までであれば、通常の動きは滑らかに見えるようです。それよりも動きの速い被写体だと違和感が出てきます(「動きのある被写体ほど遅いシャッター」というのは、スチルフォトグラファーには馴染みにくいかもしれません)。

ゆったりとした動きのダンス作例
モデル:MEGU
img_products_dslr_nofear16_03.jpg
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img_products_dslr_nofear16_06.jpg
img_products_dslr_nofear16_07.jpg
img_products_dslr_nofear16_08.jpg 筆者が中部電塾動画セミナーで撮影したムービー。フレームレート:30fps、シャッタースピード:1/30 秒、フルHD。それほど動きの激しいダンスではないが、1/30 秒のシャッター速度だと、1コマ1コマで見ると手足や髪はブレている。しかし30fps程度の動画では、このブレが滑らかな動きを作るのだ。
ちなみに、この撮影は3台のカメラで同時撮影。Final Cut Pro X は音声による「クリップの同期」機能を持っているので、全てのカメラでオーディオ(ダンスのために流れている音楽)を記録しておくと、音声波形を元に複数の映像の時間軸を揃えてくれる(右画面)。ポイントは、記録するオーディオが音楽の場合、似た波形が出やすいので、わかりやすいきっかけの音(「シーンスタート!」等)を入れておくこと。そして一度スタートしたら、カメラは止めないこと。
後は「同期されたクリップ」をタイムライン上でオープンして、不要なシーンをカット(作例ではフェードしている)。複数カメラによるマルチアングルの編集を一気に仕上げることが可能だ。

問題は日中の明るい屋外での撮影。屋外ではどうしても背景に排除不可能な「邪魔物」が多く存在します。

そのため「背景をぼかす」のですが、結果、開放に近い絞りを選択したくなります。適正露光のためにはシャッターを速くしなくてはならず、1コマ1コマのカットが見事にブレのない静止した画像になり、ぎこちない動きの動画を撮影してしまうのです(シャッタースピードをオートで撮影してはいけない理由の一つがこれです。オートだと、フレームレートに関わらず、周囲の明るさに合わせてシャッターがどんどん速くなってしまいます)。

この問題の効果的な対抗策が、5〜6段のNDフィルターをレンズに装着して、シャッタースピードを1/30秒まで落とすことです。伝統的なムービーの手法ですが、感度が上がってしまったデジタルの世界でこそ、この手法は生きているようです。ただしファインダーは真っ暗になってしまうため、ライブビューが必須です。

もう一つ、フレームレートとシャッタースピードを意識しなくてはいけないシーンとして、会議室などで撮影する出張撮影があります。通常蛍光灯(高周波点灯していないもの)のフリッカー問題。専用の照明光源を大量に持ち込めないことも多いのです。

その場合は50fpsのフレームレートを選択できるカメラを使用するようにしています。電源周波数が50Hzの関東圏では、シャッターを1/50秒にすることでフリッカーを抑えられるため、50fps、1/50秒で撮影するのです。25fps設定でシャッタースピード1/25秒でも良いのですが、この場合「確実にフリッカーが出ない」とは言い切れません。インターネット用で高いフレームレートが必要ない動画の場合でも、多少滑らかさは犠牲になりますが、50fps、1/50秒で撮影して、25fpsに書き出すようにしています。

50fpsのフレームレート設定がないカメラを使う場合、30fpsで1/50秒か、60fpsで1/100秒という選択になります。(これはあくまで関東圏の話です。電源周波数が60Hzの関西圏では、60fps、1/60秒がそのまま使えます。将来的にはこちらが基本になるかもしれません。何しろ世界では50Hzの電源は少数派ですから)。

鹿野宏 Hiroshi Shikano

デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾運営委員としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。

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